奨学金制度の落とし穴…返せないとどうなる?
汗ばむ暑さを感じる季節になりました。今年は梅雨明けも早く、夏は酷暑との予想だそうです。ウクライナでの戦争、北朝鮮の花火のような弾道ミサイル、中国・ロシアの爆撃機に、中国の空母と日本の安全保障もまさに熱い季節の到来を予感させます。
そんな中でも日々の生活は大事なわけで、4月からは多くの方のお子様も進学進級されて、教育費ってお金かかるな~と実感されている方が多い時期ではないでしょうか。そういうわけで、今回は教育資金について考えてみます。
生涯生活設計を考える中で、お子様の教育資金の問題は結構大きなウェイトを占めるかと思います。やはりお子様に十分な教育機会をと願うのは、親としてごく自然な気持ちですし、一方でその負担も十分に準備が必要な額となってきます。
この教育資金をプランニングする上では、もちろんご自身の収入からの貯えがあることがもっとも良いことではありますが、他にも様々な方法がありますので、それらを少しずつ見ていきたいと思います。そしてそれらをうまく組み合わせて教育資金を準備することでよりよい生涯生活設計が可能となってきます。
文部科学省の「平成30年度子供の学習費調査の結果について」によれば、子供の幼稚園から大学までの教育費は、私立や公立の選択によって差は出てきますが、ざっくりと約1300万円ほどだそうです。
でも、一度に1300万円が必要なわけではないことに注意が必要です。一番お金がかかるのがお子さんが大学に入学した4年間のようで、だいたい4年間で800万円ほど必要になるという統計が出ています。
ご自身の財産として貯金から教育資金を全部出せるのがベストではありますが、そうでない場合に教育資金として利用できる制度や金融商品としては、主に以下のようなものが考えられます。
まず学資(こども)保険について考えてみます。学資保険は、お子様に掛ける保険で、満期をお子様の15歳、18歳、22歳満期と様々な時期に設定した商品があります。
そして多くの場合、満期祝い金や小・中・高・大学等の入学年齢に達したときに祝い金が出ます。
また、契約者である親が死亡したり高度障害となった場合には、それ以降の保険料の支払いが免除される一方で各祝い金や満期祝いを受け取ることができます。さらに育英・養育年金特約に入っている場合は育英年金や一時金を後継養育者が受け取ることができる商品もあります。
一方で被保険者である子が死亡した場合は、死亡保険金が支払われて保険契約は消滅します。
学資保険のメリットとには次のようなものがあります。
・貯金が苦手な人でも天引きで半強制的に一定額を教育資金に回すことができる。
・親(契約者)に万が一のことがあった場合でも、死亡保険金が出る。
・生命保険料控除が受けられる。
これに対してデメリットがあるということにも注意が必要です。
まず、最初の貯金ができない方でも半強制的に一定額を教育資金に回すことができるという点ですが、ネット上でいい保険として挙げられているある保険を見てみましょう。
上の表は某生命保険の学資保険です。
これを見ると30歳の男性が、0歳のお子様に保険を掛け、17歳になるまで毎月10170円の保険料を払います。
そうすると入園、入学、成人の際に祝い金が受け取れ、22歳の時に満期保険金100万円が受け取れるという保険です。
返礼率が101.2%となっているので、17年間毎月保険料を払い続けることができれば、額面的には支払った保険料と合計でほぼ同額の保険金を受け取ることができます。
しかし、現実には17年間継続して保険に入ることができる人は、そう多くはありません。死亡した際の保障等もありますのでそこにサービス料がかかる分、途中で解約した場合には、解約返戻金はそれまでに支払った保険料の総額を大きく下回る場合がほとんどです。実は多くの場合、通常毎年2~4%の方が保険を中途解約していくと言われています。そして中途解約者が出るほど保険会社は利益が増えます。なぜなら満期保険金や祝い金を支払う必要がなくなるからです。
また、17年の間物価は上昇していきますので、22年後に支払った保険料の101.2%が受け取れるということは、ほぼ確実に損をするということになります。また、途中で物価上昇が進んだり、金利が上がった場合でも契約当初の利率が適用されるので、資産を増やす意味ではかなり不利な状況となってしまいます。
そして、先ほどの保険の返礼率が100%であるものは稀で、多くの学資保険の返礼率が80%台に留まっているのは注意すべき点かもしれません。
次に、「親(契約者)に万が一のことがあった場合でも、死亡保険金が出る」ということですが、あくまで生存している場合にその学資保険で備えようとしていた教育資金が残るという意味であり、生活保障には至らない保険であることを認識しておく必要があります。
生命保険料控除は確かに所得税・住民税が一定額減額(控除)されるので魅力的に聞こえますが、実は非常に微々たるものです。
年間の保険料が8万円以上払っていても、所得税・住民税の税率が10%の人であれば所得税4000円、住民税2800円の合計6800円が安くなる程度です。
長くなりました。そうしたメリット・デメリットをご自身にあてはめて、将来のご検討に役立てて頂ければ幸いです。
今回は以上となります。次回も続きます。