奨学金制度の落とし穴…返せないとどうなる?
いよいよ2021年も師走を迎えますね。皆様にとってはどういう一年でしたでしょうかという前に、最後の1ヶ月を日々しっかり過ごしたいものですね。
前回は国の財政が大変なことになっていて、財務事務次官が『このままでは国家財政は破綻する』と寄稿して騒ぎになったこと、『ワニの口』(=赤字)がどんどん大きくなっているという財務省の資料についてお話ししました。
そして、約10年前の2013年度末でこのたまった赤字が1024兆9568億円に達していて、この時点でも国民一人当たりほぼ1000万円以上借金している勘定になるそうです。
このことが私たちの生涯生活設計を考える上でどういう影響を及ぼしているかについて考えていきたいわけですが、なんだかヘンだな~と思いませんか?
それはこれまでずっと様々な形で増税してきたのに、どうして『ワニの口』はふさがらなかったんだろう?ということです。
後編では国の借金とそれを返済するための私たちの税金について、一個人としてどのような影響が出てくるのか考えていきたいと思います。
国の収入(税収)は1990年ごろをピークに25年ぐらいずっと低迷して、最近やっとそのピークと同じぐらいまで復活していることが分かります。でも、1989年には消費税が3%で始まっています。それが1997年には5%に上がり、2014年に8%、2019年に10%になりました。他にもさまざまな税金があるのですが、消費税は新しく導入された税金なのです。
この新しい「消費税」の導入は、当時猛烈な反対運動を引き起こしました。
1979年1月 大平内閣 一般消費税導入を閣議決定するも10月に導入断念
1987年2月 中曽根内閣 売上税法案が国民の大反対により5月に廃案
1988年12月 竹下内閣 消費税法成立 翌4月~税率3%
ここまで10年もかかっています。なお、他の事件等の影響もありましたが、消費税導入の2カ月後に退陣した時の竹下内閣の世論調査での支持率は、何と
3.9%
という史上最低の数字を記録しています。
(なお、最近退陣した菅総理大臣の辞任前の支持率は約30%です。)
消費税導入の理由はいくつかありますが、その中でも大きかった理由としては、高齢化社会への対応があったのです。
当時から日本は、世界の主要国においても例をみない早さで人口の高齢化が進んでおり、年金、医療、福祉のための財源確保が喫緊の課題とされていました。従来のような現役世代(給与所得等)に頼った税制では、今後、働き手の税負担も限界に達するほか、納税者の重税感や不公平感が高まり、事業意欲や勤労意欲をも阻害することにもなりかねないことが懸念されたのです。
でも、グラフからわかる通り、導入の翌々年からは税収は減っていき、1997年、2014年、2019年と消費税率を上げてもワニの口はほとんどふさがっていないのです。
財務省の税収の推移のグラフを見てみましょう。
確かに、消費税率を上げると、税収も上がってはいます。でも、バブル崩壊やリーマンショック、その他もろもろの理由で、所得税も法人税もどんどん下がってしまってますね。そして景気対策や社会保障関係費等の支出はどんどん増やしているので、結果としてワニの口はふさがらなかったんですね。
いわゆる国の借金は全体として減ることなくどんどん増えていっています。
所得税による税収は2010年ごろまでは減り続けて、それからは増加傾向です。法人税は傾向として30年前の半分程度になっています。
これを簡単にまとめると
会社からの税金(法人税)は減って個人からの所得税収は増えている。加えて消費税からの税収はどんどん増えているわけですから、個人個人の税負担はますます重くなっているということになります。そして、国自体の借金は減らずに増えているわけですから、これからも個人個人の所得税からの負担は軽くなるとは少し考えにくいわけです。
給料からの社会保険料や所得税、住民税の天引きを見て、ちょっと重いなぁと思う人は多いと思いますが、これからも軽くなることはないかもしれません。
内閣府のHPに『個人所得税の課税ベースと税負担について』という政策効果分析レポートが掲載されています。10年ほど前のレポートになりますが、その文面を追っていくと、次のような分析が並んでいます。
『我が国の控除制度の設計は、相対的に高所得層に有利なものとなっている』
『現在の所得税制は「薄く広く」負担を分かち合う姿とは言いがたい』
『高所得層ほどより多くの割合の者が各種控除の適用を受けている』
『様々な所得控除は低所得層の所得税負担を非課税にするとともに、その仕組上、高所得層により大きな額のメリットを与える。また、控除が適用される者の割合も高所得層の方が高い。 さらに、所得控除の適用により税負担は大きく軽減されており・・・』
少し驚きですが、今、あなたが長期的に豊かな安心の生活を送ろうと思っているのであれば、そうした不公平で厳しい税負担環境に自分がいることを自覚しないといけませんね。(あくまで高所得層にいない場合ですよ。)
そして、そのための方策を少しずつとっていくことが生涯生活設計上大事になってきます。
長くなってしまいました。年末調整の時期ですが、こうした制度さえも年収の高い人ほど有利な不公平な制度になっています。還付金でやったーと嬉しくなってしまうのが常ですが、少し冷静に現状を把握することが安心できる将来へのカギですね。
(生命保険等にたくさん入って還付金で喜んでいる人は気を付けてくださいね)