【自衛官向け】退職金だけで老後は安心?
自衛官の定年年齢が2020年に、54歳から55歳に1年引き上げられました。「1年でも」長く働くことができれば、老後の資金づくりの助けになるので、安堵した自衛官は多いでしょう。しかし「わずか1年」では、絶対的な安心感は得られません。
自衛官には依然として、自分と家族の生活を守るための資金づくりが求められます。国は退職後の自衛官の生活費のケアはしてくれません。
そこで自衛官には生涯生活設計が必要になります。防衛省も自衛官たちに、生涯生活設計をつくることを推奨しています。
従来の自衛官の定年年齢は、次のようになっていました。
2020年に定年年齢が変わったのは以下のとおりです。
そのほかの階級は変わっていません。
ただ防衛省は、今後も定年年齢を引き上げるとしており、最終的に2022年には以下のようになります。()内は従来の定年年齢です。
このように、段階的ではありますが、すべての階級で1歳、定年年齢が引き上げられます。
防衛省は定年年齢を引き上げる理由について「自衛隊の活動を支える人的基盤を一層強化していくため、知見を豊富に備えた人材の一層の有効活用を図る必要がある」としています。
「自衛官は国家公務員だから定年後は安泰」
もし現役の自衛官が、自身の定年後をこのように楽観視していたら注意してください。
「定年が1年引き上げられたのだから、よりましになるはず」
このような考えも捨てたほうがよいでしょう。
公務員の人事行政を担う人事院は、公務員の定年後の状況について次のように紹介しています。
“
1 収入が減る
公的年金の支給開始年齢の65歳への段階的引上げにともない、定年後に働かなかった場合は無収入となり、また、再任用、再就職をしたとしても、定年前に比べ、収入は大幅に減ります
“
[注1]
収入が大幅に減る、と断言しています。
そして人事院は、すべての公務員に対して、退職後の長い人生を充実させられるように、しっかりと準備することを呼び掛けています。
人事院は、国が公務員の定年後の経済状況のケアをするとはいっていません。人事院は、公務員1人ひとりが、自分で「準備することが大切」といっているだけです。
だから、50代で定年退職を迎える自衛官は、生涯生活設計が必要になるわけです。
[注1]人事院
https://www.jinji.go.jp/shougai-so-go-joho/bring/henka.html
防衛省も、50代という若さで定年を迎える自衛官の、その後の人生を心配していて、自衛官は早い段階から生涯生活設計を行う必要があり、積極的に支援していくとしています。
生涯生活設計とは、自分のこれからの人生を、「生きがい」「健康」「経済生活」の3つの視点で分析して、より安定的な「道筋」をつくることをいいます。
ここでは経済生活に関する生涯生活設計にフォーカスしています。
生涯生活設計を立てると、自身の経済生活が安定するようになるでしょう。生涯生活設計をつくっても収入が増えるわけではないのに、なぜ生活が安定するのでしょうか。
それは、生涯生活設計によってお金の出入りが見えてくるので、無理な出費を抑制できたり、安定的な収入を確保する取り組みができたりするからです。
自分の望む生活水準と実現可能な生活水準の間のギャップが見える化することも、生涯生活設計をつくるメリットになります。
生涯生活設計を立てるには、生涯生活設計表を作成する必要があります。
生涯生活設計表は、ライフイベント(人生における大きな出来事)ごとに、収入と支出を予測してつくります。
いば、自家用車を購入するというライフイベントは、生涯生活設計表に次のように記載することができます。
このときの金額は「大体」で構いません。「400万円くらいの自動車がほしい」と思えば、とりあえずその金額を入れておきましょう。
生涯生活設計表は更新していくので、新しい生涯生活設計表をつくるときに、より正確な金額を入れていけばよいのです。
将来、子供がほしいと考えている人は、生涯生活設計表に次のように記入することができます。
「第1子、誕生」の収入が30万円になっているのは、出産祝いなどが想定されるからです。
このように、子供を持つことを経済の観点から見える化すると、「意外に多額のお金がかかる」ことがわかります。
そうすると、「自家用車に400万円もかけられないかもしれない」と考えるようになります。
生涯生活設計表によって、自分の身の丈に合った将来生活を描けるようになるわけです。
自衛官は、一般的な会社員より早く定年が到来するので、生涯生活設計表はよりシビアに作成する必要があります。