【自衛官】定年延長になってもまだ生涯生活設計が必要な理由
自衛官は公務員なので収入は安定していると思われがちですが、退官するのは一般的に54歳~56歳と民間企業の定年退職より早く、年金を受給するまでかなりの期間があります。退官後は若年給付金が支払われますが、退官直後と翌々年の計2回のみですので、年金が給付されるまでの残り10年間は再就職をして収入を得るのが一般的です。ただ、50歳を過ぎてからの再就職は難しく、年収も大幅に下がってしまうので、早めに準備をしておく必要があります。
自衛官は、防衛省自衛隊に所属する特別職国家公務員にあたります。
そのため、民間企業と違って年収が景気に左右される心配がなく、将来安泰と思われがちです。
たしかに現役でいる間は同年代の方よりも収入が高く、手当なども充実していますが、自衛隊を退官したあとの暮らしは意外にも厳しいものです。
今回は自衛官が退官したあとの生活事情や、生活を支える方法についてまとめました。
日本では大多数の企業が定年制を導入しており、労働者は60歳になるまで働いたあと、希望すれば65歳まで継続雇用してもらうことが可能です。
一方、自衛官の定年(退官)は階級区分によって異なりますが、早ければ53歳に定年を迎えます。
将官など一部階級に属する自衛官は60歳~62歳まで勤めることができますが、ほとんどの人は54~56歳の間に退官することになります。
日本では年金の支給がスタートするのは65歳からですので、54歳で退官した場合、年金を受け取るまで12年も間が空いてしまうのです。
もちろん規定に則って退職金は支給されますが、60歳または65歳で定年退職し、退職金をもしもの時の資金としてプールしておける民間企業に比べると、老後の生活は厳しくなる可能性が大きいでしょう。
かつて自衛官は、55歳から年金を受け取れる共済年金の特例を受けることができました。
しかし、自衛官の共済保険料の掛金負担が大きくなることが予測されたため、特例を廃止する代わりに若年給付金の制度が新たに設けられるようになりました。
若年給付金とは正式名称を「若年定年退職者給付金」といい、自衛官として20年以上勤続したうえで定年退職した人、または定年以前1年以内に勧奨などによって退職した人に対し、2度にわたって一時金を支給します。
支給額は退官時の階級によって異なりますが、およそ1,000万円前後が2回に分けて支給されるケースが一般的です。
一見したところかなり高額に思えますが、54歳で退官した場合、公的年金を受け取るまでに11年かかることを考えると、1,000万円÷11年÷12ヶ月=約75,757円となり、1ヶ月あたり8万円弱しかカバーできなくなってしまいます。
しかも、退職所得扱いになる1回目の支給とは異なり、2回目の支給は一時所得扱いになるため、確定申告をして税金を支払わなければなりません。
ですから、ほとんどの自衛官は自衛隊を退官後、民間企業に再就職し、公的年金を受け取れるようになるまでの収入を確保しています。
自衛官という肩書きは再就職に有利とされていますが、それでも再就職後の年収は現役に比べて大幅にダウンすることを覚悟しなければなりません。
中高年の転職・再就職調査によると、男性の再就職後の月の給与は「20万円以上40万円未満」と回答した人が41.0%、次いで「10万円以上20万円未満」が27.4%となり、半数以上の人が月収40万円未満に収まっていることがわかります。[※注1]
自衛官の平均年収は50代以降、約770万円に及ぶといわれているため、仮に再就職後の月収が30万円だった場合、若年給付金の分を合わせても現役の6割程度にしか満たないことになります。
退職金は老後の資金として貯めておくことを考えると、退官後から公的年金を受給するまでの収入の穴埋めは他の方法でカバーする必要があるでしょう。
[※注1]中高年齢者の転職・再就職調査
https://www.jil.go.jp/institute/research/2016/documents/149.pdf
自衛官の定年は54~56歳と説明しましたが、実は2020年1月以降、自衛官の定年年齢の引き上げを実施することが防衛省より発表されました。
現時点では2022年1月までの実施案が提示されており、すべての階級を対象に定年年齢の引き上げが行われる予定です。
平成35年以降に定年年齢が引き上げられるかどうかは未定のままであり、現時点では引き上げ幅がまだまだ小さいことを考えると、やはり退官後に安定した収入を得られる道を模索するべきでしょう。