新しい国家資格「賃貸不動産経営管理士」とは【前編】
4月になり入学、進学、新年度と皆様それぞれの新しいスタートを切られた時節かと思います。桜は散って、もう汗ばむ温かさも感じられます。そんな美しい日常の情景とは別に、気が付くといろいろなものが値上がりしています。また、円も約20年ぶりの126円台に達するなど円安が進み、こうなるとただでも高い輸入資源価格がさらに上昇することになり、家計にも大きな影響が出てきそうです。
さて、前回は不動産の資格で、民間の資格から国家資格へと変わった賃貸不動産経営管理士という資格について述べてきました。今回はその続きです。
それまで民間資格だった賃貸不動産経営管理士が国家資格となった理由をごく簡単にまとめると、
こうした1から3の流れの中で、賃貸住宅管理業者の登録制度を新しく設け、サブリース事業を規制することになったわけです。
ちなみにここで改めてサブリースって何?ということですが、下の図をご参照下さい。
物件のオーナー様が不動産会社に物件を賃貸します。
そして不動産会社はオーナーに賃料を支払います。これをマスターリースと呼びます。
不動産会社は、この物件をさらに入居者に賃貸し(転貸)、家賃を受け取ります。これがサブリースと呼ばれる契約です。
ですから、基本的には家賃から不動産会社の物件管理に伴う経費が引かれて、賃料としてオーナー様の手元に入る仕組みになります。また、家賃が下がれば賃料も下がってしまうのが一般的です。
ちなみに2018年の「かぼちゃの馬車」事件について簡単にご説明すると、かぼちゃの馬車とは、株式会社スマートデイズが展開していた女性専用シェアハウスのことです。
1室3畳ぐらいの女性専用シェアハウスには、シングルマザーーや上京する女性のニーズがあるということで、タレントのベッキー等のテレビのCMも流れ、多くの方が銀行から融資を受けて、このシェアハウスを建てました。
しかし、実際にはそれほど需要があったわけではなく、シェアハウスの入居率はだいたい30%ぐらいに留まり、家賃収入ではスマートデイズはオーナー様に支払う賃料をまかなうことができなかったのです。
スマートデイズは、35年間家賃は変わらず賃料を保証するとオーナー募集の際に謳っていました。どこからスマートデイズは利益を得ていたかというと、募集したオーナー様が建てるシェアハウスの建築会社から、物件当たり50%ものコンサルティング料を得ていたのです。
すると何が起きるかというと、物件の価格が不動産相場よりもとても高くなります。そうすると通常は銀行もオーナー様がよほどの資産をお持ちでない場合はローンを組む際に、断わったり限度額を示してそこまでの融資にするのが一般的です。
かぼちゃの馬車の場合も、オーナー様になる方の多くは普通のサラリーマンの方でした。
ですので、通常であれば融資を受けられずにお話も終わるのですが、ここで出てくるのがスルガ銀行でした。
この銀行は、そうした不動産融資を通じて収益を上げる銀行でしたので、融資にかかわる審査基準を緩くしたり、場合によってはオーナー様の審査資料を不動産会社と結託して偽造したりして審査を通すということをしていたのでした。
そうしてしばらくは業績も良かったスマートデイズですが、2017年にオーナー様に支払う賃料の減額を要求するようになり、2018年には賃料の支払いを停止して、最終的には1000棟(1万2000戸)を管理しながら、負債60億円、未払い家賃23億円を抱えて経営破綻し、800人を超えるオーナーの賃貸住宅事業が行き詰ってしまうという大事件に発展したのでした。