新しい国家資格「賃貸不動産経営管理士」とは【後編】
10月も下旬となり急に冷え込んできました。本日は東京の正午でも10度くらいと全国的に寒いようです。皆様いかがお過ごしでしょうか。
前回はコロナ禍で様々な影響が経済にも社会にも起きている中で、不動産の価値の一つの指標ともなる公示地価がどうなったのかを見てきました。
今回はオリンピックを終えて不動産価格はどのように推移していったのか、データを踏まえて考察していきたいと思います。
毎年3月に発表される公示地価では、価格が6年ぶりに新型コロナウイルスの影響等を受け、都市部商業地で顕著に下落したとされています。
国土交通省の資料を基に表を作成してみると
住宅地 | 商業地 | 全用途平均 | |
全国平均 | ▲0.4% | ▲0.8% | ▲0.5% |
東京都 | ▲0.5% | ▲1.0% | |
大阪圏 | ▲0.5% | ▲1.8% | |
名古屋圏 | ▲1.0% | ▲1.7% |
となっています。
この説明だけ聞くと、東京をはじめとする3大都市圏は、全国平均よりも大きく価格が下落したということで、都市圏に居住用マンションを持っても資産価値は下がるだけという印象をお持ちになられるかもしれません。
ですが最新の市場に注目するとまた違った動きが見えてきます。
先ほどの公示地価は、1月1日時点での価格をデータとしています。
すでに10月になっていますから、1月以降の動向が気になりますね。
幸い国土交通省が年間約30万件の不動産の取引価格情報をもとに、全国・ブロック別・都市圏別・都道府県別に不動産価格の動向を指数化した「不動産価格指数」というものを毎月公表しています。これは、2010年の価格平均を指数100として指標化したものになります。
最新のデータが9月末に発表されていて、本年2/四半期(6月)までの指数が分かります。
全国平均をグラフで見てみると、次のようなグラフになります。
右端に2021年1月から6月の全国平均の状態が映し出されていますね。
黄色の住宅地、戸建住宅もどちらかというとコロナ禍が始まった昨年よりも上昇傾向にあることが分かります。
また、びっくりするのは、区分所有のマンションを表す黄緑の線です。
確かに2020年の前半期に少し落ち込んでいるのが分かりますが、2013年以来の上昇カーブを崩すほどではありません。
そして今年の2021年に入ってからは、指数の上昇カーブが一段と急になっています。
このように全国平均での上昇傾向が見られている2021年ですが、都道府県別のデータを見てみると、
住宅地 | 商業地 | 全用途平均 | |
全国平均 | 103.4 | 105.9 | 165.8 |
東京都 | 126.6 | 111.7 | 165.3 |
大阪圏 | 115.6 | 97.0 | 167.2 |
名古屋圏 | 104.8 | 110.7 | 174.3 |
となっています。これらの数値は、前月の数値と比べても、大阪府の数字を除き全てプラスの状態です。
となると、2021年に入ってからは住宅関連、特に区分マンションの不動産価格は上昇しているということが言えます。
前回も書いたのですが、東京オリンピック後は不動産価格が下落するという見方もありました。しかし、これらのデータを見る限り、そうした傾向にはなかったようです。
確かに2013年以降の不動産価格の上昇は、特に関東圏では、オリンピックに向けたインフラ整備等があったこと、低金利政策によってマンション等不動産を購入する方が増えたことが大きな要因と言えます。
そこに通常オリンピックのような大イベントが予定され、それに向けたインフラの整備や各種の景気刺激策が実施されて、景気が一気に上がったりするとそのイベントが終わった後に景気が低迷し、不動産の価格も低迷するというのが、オリンピック後の価格下落のシナリオでした。
しかしながら、新型コロナ対策のため、皆さんご存じのように結局オリンピックは無観客で行われ、海外からの観客も一時期は東京に人が溢れるのではないかと不安視されるぐらいでしたが、結局経済的には盛り上がるところが全くなかったのが実情です。
そのため、オリンピックが終わったことは、不動産価格にほとんど影響しなかったようです。
むしろ今は、半導体が品薄で車の生産に影響が出ているように、コロナ禍による生産量の減少と現在の需要の回復によって、住宅やマンション建設に必要な資材が品薄になり価格が上昇しています。