下がり続ける円の価値と日本の賃金
GW、皆様どのように楽しまれましたか。新型コロナの影響で我慢が続いてきたこの2,3年だけに各地も賑わっているようです。そんな一方で、円安はどんどん進んで前回20年ぶりの126円と書きましたが、そのあとすぐに131円まで円安が進みました。
前回の記事では円高・円安とは何かというお話をしてきました。今回は円高・円安の私たちの生活に及ぼす影響について考えてみたいと思います。
流通関係のニュースを調べてみると4月以降値上げされるものが、それはもう目白押しになっています。
帝国データバンクの調べでは、有効回答した1855社中、過去半年から今後1年以内に値上げ予定の起業の割合は64.7%となっています。特に「飲食料品・飼料製造」、「化学品製造」では8割を超える割合となっているとのことです。
前回の記事で、M社とT社の例を出しました。
1ドル=100円の時に
M社は米国で10ドル(仕入れ価格1000円)のハンバーガーを日本に輸入しているとします。
一方T社は、車を米国に輸出して、1台1000ドル(日本円で10万円)で販売しています。
これが1ドル=130円になると
M社はハンバーガーの仕入れ価格が30%上がり、
T社は自動車1台あたりの利益が30%上がる。
すなわち円安になると、輸出にはメリットが大きく、輸入には輸入商品の物価上昇というデメリットが生じるということをすでにお分かりいただけたかと思います。
今回の値上げ理由は原材料高、物流コスト高となっていますが、その根本は円安とそれに伴う原油等燃料費の高騰です。農産物でさえ手作業だけで作ることはできません。
トラクターや稲刈り機、そして運ぶトラックまですべて燃料を必要とします。
モノを作るのに電気が必要であれば、電気を作るのは火力発電だったりもするわけです。(ちなみに2020年でも日本の電力の7割超は火力発電です。)
すると円安によって当然輸入エネルギーのコストは上昇し、それがあらゆる分野の製品のコストの上昇となって跳ね返ってくるわけです。
なぜ、こうした円と他の通貨の間の相対的価値が変動するのかについては、様々な理由が考えられます。
一つは金利差です。
以前別の記事でもお話しましたが、景気によっておおよその銀行の金利が国によって誘導されます。(政策金利)今、米国では景気が非常に良くなっており、その結果モノを買う需要が高くなって、消費者物価指数が8%を超える上昇率を記録しています。
そのため、物価の上昇を抑えようと現在の0.25%の銀行の金利を高くする方向で政策が進んでいます。
反対に日本では、景気をよくするため物価上昇率2%を目標としていますが、未だに0.8%程度の上昇ということで、今後も引き続き政策金利を-0.1%のまま据え置くと日銀の黒田総裁が発表しました。
すると日本で預けると-0.1%の金利で減るお金を、米国で0.25%以上の金利で運用したくなりますよね。
すると、さまざまな運用者が全体として日本円のお金をドルに換える、つまり円を売ってドルを買う動きが強くなります。
その結果ドルが高くなって、円が安くなって、いわゆる円安・ドル高状態になるわけです。
今回も長くなってしまいましたが、お分かりいただけましたでしょうか。
今後、円は150円まで円安に動くのではという見方も強いようです。
ドル資産を持っている人はうれしいですね。しっかりと今後経済の動向をみていくことが生涯生活設計にも大きな影響を生むかもしれません。